2017年7月8日土曜日

トルストイの印度寓話11『鷹と鶏』

トルストイ少年少女読本[3] 子供の智恵 米川正夫 訳 河出書房 1946 昭和21年

トルストイの印度寓話11『鷹と鶏』
 一羽の鷹が主人によく馴れて、呼ばれると手に留まつてゐました。ところが鶏は主人を避(よ)けて、人が傍へ寄ると騒ぎ立てました。そこで鷹が鶏に言ひま した。
 『お前たち鶏には、感謝といふものがないのだ。下司根性が見えすいてゐる。お前たちは腹が減つてゐるときでなければ、主人の傍へ寄りつかうとしない。と ころが、われ/\のやうに野で育つ鳥は大違ひだ。われ/\は力もうんとあるし、飛ぶことだつて誰よりも一ばん早いが、人間を避けたりなどしないばかりか、 かへつて呼ばれたら、その手に留まるくらゐだ。われ/\は養育の恩を覚えてゐるからね。』
 すると鶏は言ひました。
 『君達が人間をよけて逃げまはらないのは、一度も焼き鷹を見たことがないからだよ。ところが僕達は、のべつ焼き鶏を見せられてゐるんだよ。』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1169127/11


露国民衆文学全書 第三編 ろしあ童話集  昇曙夢 大倉書店 1919 大正8年
ろしあ童話集トルストイ物語11『鷹と鶏』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/958849/14

春陽堂少年文庫 トルストイ童話集 昇曙夢(のぼりしょうむ) 1932 昭和7年
トルストイ童話集童話篇11『鷹と鶏』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1168514/10

The Complete Works of Count Tolstoy Volume XII.
Fables for Children 1869-1872
by Count Lev N. Tolstoy
Translated from the Original Russian and edited by Leo Wiener
Assistant Professor of Slavic Langauages at Harvard University
Boston Dana Estes & Company Publishers
II. ADAPTATIONS AND IMITATIONS OF HINDOO FABLES

11.THE FALCON AND THE COCK
The Falcon was used to the master, and came to his hand when he was called; the Cock ran away from his master and cried when people went up to him. So the Falcon said to the Cock:
"In you Cocks there is no gratitude; one can see that you are of a common breed. You go to your masters only when you are hungry. It is different with us wild birds. We have much strength, and we can fly faster than anybody; still we do not fly away from people, but of our own accord go to their hands when we are called. We remember that they feed us."
Then the Cock said:
"You do not run away from people because you have never seen a roast Falcon, but we, you know, see roast Cocks."
https://archive.org/stream/completeworksofc12tols?ui=embed#page/22/mode/2up


ラ・フォンテーヌ寓話Laf08.21『タカと食用鶏』
Ernest Griset231『鷹と食用鶏』
  食用の雄鶏は、いよいよ自分もつぶされる時が近づいたのだと気付き、農場の使用人など、この地所の者と共に小屋に入るのを注意深く避けていた。彼は以 前、火のぼうぼう燃えさかる、厨房での光景を目にしていたのだ。死刑執行人のような料理長が、恐ろしい包丁を手に、彼の仲間たちの頭を切り落としていたの だ。以来、その恐ろしい光景が頭にこびりついて離れなかったのだ。
  そんなある日のこと、この鶏が焼き鳥に供されることとなった。料理人の助手たちは、コッコッコと鳴いてみたり、あらゆる手だてを使って、彼を呼び寄せ ようとしたが、全て無駄であった。
「おまえは、よっぽど、耳が悪くて鈍感な奴なんだな」鷹が食用鶏に言った。「お前は、呼ぶ声が聞こえないのか? それとも、自分が呼ばれていることが分か らないのか? 俺を見習えよ。俺はご主人様に、二度は名前を呼ばせないぜ」
「何を言ってるんだ!」食用鶏が答えた。「もし鷹も食用鶏のように、焼き串に刺されて、厨房の火にかけられるならば、今の私のように、耳が聞こえなくな り、ゆっくりと主人の許へ赴くだろうよ」

Pe646『食用のオンドリとタカ』


・類話

タウンゼント45『仔ブタとヤギとヒツジ』
 仔ブタが、ヤギとヒツジと共に、柵の中に閉じこめられた。ある時、ヒツジ飼が仔ブタを捕まえようとおさえつけた。すると、仔ブタは、ブヒブヒ喚き散ら し、激しく抵抗した。ヒツジとヤギは、その喚き声にうんざりして、文句を言った。
「我々もしょっちゅう、彼に捕まえられるけど、そんなに泣き喚いたりしないよ。」
 すると、仔ブタが言った。
「あんたらと、僕とでは、事情が違うよ。……彼があんたらを捕まえるのは、毛やお乳をとるためだけど、僕をおさえつけるのは、肉をとるためなんだから!」
Pe85 Cha94  Laf08.12 TMI.J1733 イソップ伝(G)48 (Aesop)

イソップ伝(G)48
 一人の学生が他の皆に言った。
「羊は屠殺所へ連れて行かれても騒いだりしないのに、豚は金切り声を上げて騒ぐのは何故だろうか?」
誰もこの問題に答えられないでいると、イソップが言った。
「それはですね、羊には有益な乳があり見事な毛があるからです。毛が重くなれば刈って貰いますし、乳が張れば搾ってもらいます。ですから、生贄として連れ て行かれても、何か好ましいことをしてもらうのだと思い、危害が加えられるとは思いもよらないのです。ですから、ナイフをあてがわれても、逃げようとしな いのです。ところが豚は、有益な乳や毛を全く持っていません。ですから金切り声を上げるのです。豚は、連れて行かれるのは、肉をとるためだと知っているの ですから、騒ぎ立てるのも不思議ではありません」
学生たちが言った。
「おお、ミューズの神々よ、全くもって素晴らしい答えだ」

ギリシア奇談集 アイリアノス 松平千秋・中務哲郎 訳 岩波文庫
ギリシア奇談集10.05『イソップ寓話の野豚と僭主』
 これはプリュギアの話である。プリュギア生まれのアイソポス[イソップ]の話だからであるが、それによると、野豚を捕らえると大声で鳴くが、それも無理 からぬことだという。豚には毛もなく乳も出さず、肉以外には何もない。そこで、使う人間にとって自分がどういう役に立つかということを心得ているので、直 に死を予感するのである。いつも危惧を抱きながらびくびくしている僭主たちも、このイソップの野豚に似ている。彼らは自分たちも野豚と同じように、おのれ の命が民衆の意志にかかっていることを知っているからである。


ト ルストイの印度寓話対照表
トルストイの アーズブカ対照表
トルストイの アリとハト対照表