2017年7月6日木曜日

トルストイの印度寓話10『一番おいしい梨』

トルストイ少年少女読本[3] 子供の智恵 米川正夫 訳 河出書房 1946 昭和21年

トルストイの印度寓話10『一番おいしい梨』
 一人の旦那が、一番おいしい梨を買ひに、下男を使ひにやりました。下男は店へ行つて、梨をくれと言ひました。商人が出してやりますと、下男はかう言ひま した。
 『いや、一番おいしい梨をくれ。』
 商人は言ひました。
 『一つ味を利いてごらんなさい。さうしたら、おいしいといふ事が分かるから。』
 『どうして、どうして。』と下男が言ひました。『たつた一つしか味を利かないのに、みんなおいしいといふ事が分かるものか?』
 下男はどの梨もみんな少しづつ噛じつて、それを家へ持つて帰りました。すると旦那は屋敷を追ひ出してしまひました。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1169127/11

露国民衆文学全書 第三編 ろしあ童話集  昇曙夢(のぼりしょうむ) 大倉書店 1919 大正8年
ろしあ童話集トルストイ物語10『一番美味しい梨』

春陽堂少年文庫 トルストイ童話集 昇曙夢(のぼりしょうむ) 1932 昭和7年
トルストイ童話集童話篇10『一番美味しい梨』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1168514/10

The Complete Works of Count Tolstoy Volume XII.
Fables for Children 1869-1872
by Count Lev N. Tolstoy
Translated from the Original Russian and edited by Leo Wiener
Assistant Professor of Slavic Langauages at Harvard University
Boston Dana Estes & Company Publishers
II. ADAPTATIONS AND IMITATIONS OF HINDOO FABLES

10.THE BEST PEARS
A master sent his Servant to buy the best-tasting pears. The Servant came to the shop and asked for pears. The dealer gave him some; but the Servant said:
"No, give me the best!"
The dealer said:
"Try one; you will see that they taste good."
"How shall I know," said the Servant, "that they all taste good, if I try one only?"
He bit off a piece from each pear, and brought them to his master. Then his master sent him away.
https://archive.org/stream/completeworksofc12tols?ui=embed#page/22/mode/2up


仏典

昭和新纂 国訳大蔵経 経典部 第二巻 東方書院
百喩経4.05(70)『嘗菴婆羅果喩』
菴婆羅果(あんばらくわ)を嘗(な)むるの喩(たとへ)
 昔一(いち)長者有り、人を遣(つかは)し銭(ぜに)を持(ぢ)して他の園中(をんちう)に至り、嘗菴婆羅果(あんばらくわ)を買はしめて之を食(じ き)せんと欲す。之に勅(ちよく)して言はく、『好く甜美(かんみ)なる者を汝当(まさ)に買来るべし。』即便(すなはち)銭を持(ぢ)して往(ゆ)いて 其果(そのくわ)を買ふ。果主(くわしゆ)言はく、『我此樹果は悉く皆美好(みかう)、一(いつ)として悪しき者無し、汝一果を嘗めて以て之を知るに足ら ん。』果を買ふ者言はく、『我今当(まさ)に一一(いち/\)之を嘗(な)むべし、然る後当に取るべし。但一(ただいつ)のみを嘗めて何を以てか知るべ き。』尋(つ)いで即ち果を取り一一皆嘗め持ち来つて家に帰る。長者見已(みをは)るに悪しくして食せず、便(すなは)ち一切都(いつさいすべ)て棄 (す)つ。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1172018/164

世界文学大系 4 インド集 筑摩書房
カーター・サリット・サーガラ 愚者物語 岩本裕 訳
インド愚者物語29『果物の味をみた後に持参した男の話』


ト ルストイの印度寓話対照表
トルストイの アーズブカ対照表
トルストイの アリとハト対照表