トルストイ少年少女読本 [3] 子どもの智恵 米川正夫
訳 河出書房 1946 昭和21年 トルストイの印度寓話04『猿』 一人の男が森へ行つて、一本の木を伐り倒し、それを鋸で挽き始めました。男は木の片はしを切り株の上へ載せ、馬乗りになつて挽き始めました。やがて切り 口へ楔を打ち込んで、更に挽きつゞけた後、また楔を抜いて、もつと先きの方へ入れ替へました。 一匹の猿が木の上に坐つて、それを見てゐました。男がひと寝入りしに横になつたとき、猿はその木へ馬乗りになつて、同じ事をしようとしました。けれど楔 を抜き取つたとき、切り口が締まつて、猿の尻尾を挟んでしまひました。猿はもがいたり叫んだりし始めました。男は目を醒まして、猿を撲りつけ、縄で縛つて しまひました。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1169127/9
https://archive.org/stream/completeworksofc12tols?ui=embed#page/20/mode/2up露国民衆文学全書 第三編 ろしあ童話集 昇曙夢(のぼりしょうむ) 大倉書店 1919 大正8年 ろしあ童話集トルストイ物語04『猿』 春陽堂少年文庫 トルストイ童話集 昇曙夢(のぼりしょうむ) 1932 昭和7年 トルストイ童話集物語篇04『猿』 The Complete Works of Count Tolstoy Volume XII. Fables for Children 1869-1872 by Count Lev N. Tolstoy Translated from the Original Russian and edited by Leo Wiener Assistant Professor of Slavic Langauages at Harvard University Boston Dana Estes & Company Publishers II. ADAPTATIONS AND IMITATIONS OF HINDOO FABLES 4.THE MONKEY A Man went into the woods, cut down a tree, and began to saw it. He raised the end of the tree on a stump, sat astride over it, and began to saw. Then he drove a wedge into the split that he had sawed, and went on sawing; then he took out the wedge and drove it in farther down. A Monkey was sitting on a tree and watching him. When the Man lay down to sleep, the Monkey seated herself astride the tree, and wanted to do the same; but when she took out the wedge, the tree sprang back and caught her tail. She began to tug and to cry. The Man woke up, beat the Monkey, and tied a rope to her. 印度説話 Aesop's Fables. Illustrated by Ernest Griset. With Text Based Chiefly Upon Croxall, La Fontaine, And L'Estrange. Casssel, Petter, Galpin & Co. London, Paris & New York. Ernest Griset 297『猿と大工』 猿は、大工が木材に割れ目を入れると、次から次ぎへと二つの楔をはめ込んで木材を割って行くのを見ていた。大工は、仕事を半分の残してその場を離れた。猿 は自分の手で、木材を割ってみたくなった。そこで、木材の所へ行くと、割れ目にあてがわれていた楔を抜いた。すると、裂け目が閉まり、間抜けな猿の前足を 素速く捕らえた。猿は逃れることができなくなってしまった。そこへ大工が戻って来た。彼は自分の仕事に手を出した猿に腹を立て、猿の頭を叩き割った。 Pan1.01『猿と楔』, Hito2.01『猿と楔』, Kali1.02『猿と指物師』 cf. イソップ寓話 タウンゼント137『サルと漁師』 サルが、高い木の上に座って、漁師たちが川に網を投じるのをじいっと観察していた。しばらくすると、漁師たちは、食事のために、土手に漁網を残して帰っ て行った。 ものまね屋のサルは、木のてっぺんから下りて行き、漁師たちの真似をしようと、漁網をとって、川の中へ投じた。しかし網が体に絡みつき、サルは溺れてし まった。 サルは、死に際に独りごちた。 「こんな目に遭うのも当たり前だ。網など扱ったこともない者が、魚を捕らえようとするなんて、一体どういう了見だったのだろう」 Pe203『猿と漁師』 クルイロフ1.14『猿たち』 Ch304 Type38 TMI.K1111 (Aesop) ト ルストイの印度寓話対照表 トルストイの アーズブカ対照表 トルストイの アリとハト対照表 |