2017年7月1日土曜日

トルストイの印度寓話02『細い糸』

トルストイ少年少女読本 [3] 子どもの智恵 米川正夫 訳 河出書房 1946 昭和21年

トルストイの印度寓話02『細い糸』
(トルストイのアーズブカ076『細い糸』 )
  或る人が紡績女に細い糸を注文しました。紡績女は細い糸を紡ぎ上げましたが、あつらへた人は、こんな糸ぢや駄目だ、自分は思ひ切つて細い糸が要るんだ、と 言ひました。紡績女は、『もしこの糸が細くないと仰しやるのでしたら、それぢやこれをさし上げませう。』と言ひながら、空(くう)をさして見せました。男 はなんにも見えないと言ひました。紡績女はそれに答へて、『そりや糸がごく細いから見えないんですよ。わたしも自分で見えないくらゐですから。』と言ひま した。
 愚かな男は喜んで、もつとこんな糸を紡いでくれと注文し、ちやんとその代金を払ひました。
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露国民衆文学全書 第三編 ろしあ童話集  昇曙夢 大倉書店 1919 大正8年
ろしあ童話集トルストイ物語02『細い糸』

春陽堂少年文庫 トルストイ童話集昇曙夢(のぼりしょうむ) 1932 昭和7年
トルストイ童話集物語篇02『細い糸』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1168514/7

The Complete Works of Count Tolstoy Volume XII.
Fables for Children 1869-1872
by Count Lev N. Tolstoy
Translated from the Original Russian and edited by Leo Wiener
Assistant Professor of Slavic Langauages at Harvard University
Boston Dana Estes & Company Publishers
II. ADAPTATIONS AND IMITATIONS OF HINDOO FABLES

2.FINE THREAD
 A Man ordered some fine thread from a Spinner. The Spinner spun it for him, but the Man said that the thread was not good, and that he wanted the finest thread he could get. The Spinner said:
 "If this is not fine enough, take this!" and she pointed to an empty space.
 He said that he did not see any. The Spinner said:
 "You do not see it, because it is so fine. I do not see it myself."
 The Fool was glad, and ordered some more thread of this kind, and paid her for what he got.
https://archive.org/stream/completeworksofc12tols?ui=embed#page/18/mode/2up


・類話
cf.Type1620, cf.TMI.J2312,
cf.ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 阿部謹也 訳 岩波文庫
第27話 オイレンシュピーゲルがヘッセン方伯のために絵を描き、私生児にはその絵がみえないと思い込ませたこと。

諷世奇談 王様の新衣裳
アンデルセン 原著
在一居士 (高橋五郎) 河野政喜 訳
祥春堂(春祥堂) (国会図書館の書誌情報には祥雲堂とある) 
明治二十一年

諷世奇談 王様の新衣裳
むかし或る処に衣服道楽(きものだうらく)の王様があつて、此(これ)の彼(あれ)のと新式(しんがた)の衣裳を買(かひ)とゝのふばかりで御庫(おく ら)の金銀を費(つかひ)はたすほど、平生(へいぜい)服装(きるもの)に身をやつして居(を)られまして、歓兵式とか、見物とか、遊歩(いうほ)とかに 出かける時には新様(しんがた)の衣裳を見せやうと云ふのが、何よりの目的であつたと申します、然(さう)いふ訳だから毎日一時一時に新しい衣裳を着かへ られました、夫(それ)からして人が、他の王様なら、「殿下は只今内閣会議に御出ましでござる」と云ふところを、此(この)王様には少(ち)と風(よう) がはりに来て、「只今殿下は衣裳室(いしやうべや)へ御入(おいり)でござる」と言(いつ)たさうです、

さて其(その)都府(みやこ)と云ふは甚だ美しくて、華(はな)やかで、四方八方(よもやも)の旅人が絶ず輻輳(ふくそう)してをつたが、一日(あるひ) 二人の欺騙者(かたり)が何処やらか進(やつ)て来て、王様に申しあげますには、我々どもは織物師で天下一の美麗な布帛(きぬ)を織(おり)たてる術を授 かつてをります、して其布帛(きぬ)は色沢(いろつや)と云ひ模様と云ひ、尋常(よのつね)ならず綺麗で、その上にまた此布帛で製(こし)らへた衣服(き もの)には不思議な徳が具(そな)はつてゐて、自分(わがみ)の職分(やくめ)を勤める伎倆(はたらき)の無い人や、余りに量見の狭い人などには如何(ど う)しても目に見えませんと、箇様(かやう)に申しました、

そこで王様は考がへられた、「是(これ)は如何にも珍らしい衣服(きもの)だ、是さへあれば余が臣下の中(うち)の任に堪ぬ人物を見わけることが苦もなく 出来る、怜悧者(かしこいもの)も愚昧者(おろかなもの)も容易(たやす)くわかる、善(よ)し善(よ)し、是は是非とも無くてはならぬ品だわい、」
因(よつ)て王様は此(この)二人の欺騙者(かたり)に莫大の金額(かね)を交(わた)して、直(たゞち)に事業(しごと)にとりかゝらせられました、そ こで二人は頓(やが)て二台の機(はた)をしつらつて、織たてる風体(ふうつき)をはじめたが、実は糸管(いとくだ)には糸も何も無(なく)つて、全たく 真似ばかりでありました、箇様(かやう)に空(から)つぽの機に取(とつ)ついて、夜中までも働らいてをり、毎日の様に絹糸と金子(かね)を請求して皆悉 (みんな)わが懐中(ふところ)にそれを入てしまひました、

時に王様が言(いは)れた、「併(しか)し渠等(きやつら)は最早(もう)何位(どのくらゐ)いつたか見ずば成るまい」、とは言つたものゝ、愚昧(おろ か)な者や、職分(やく)に堪ぬ様な人物には此(この)布帛(きぬ)は見えないと聞たのを思ひ出して少し腕をくまれた、もつとも自分の事を如何(どう)か と疑がはれたのでは無(なか)つたが、先(まづ)自分よりも先に誰か遣(やつ)て様子を見さすが善(よか)らうと決(きめ)られました、都府中([み]や こ)の人はみな此布帛(きぬ)に奇妙不思議の徳がある事を聞(きゝ)しつてゐて、孰(いづ)れも一日も早く近処隣屋(きんじよとなり)の人々の智愚(ち ぐ)を試さうといふ心がまへで、只管(ひたすら)その布帛(きぬ)の織あがるのを待(まち)かねて、待(まち)どほしがつてをりました、
「はて誰を織物師の所へ遣(やら)うか、否(いや)あの余が老功(らうこう)の大宰相がよからう、彼(あ)の布帛(きぬ)を鑑定するのでは彼(あれ)に超 (こえ)た者はあるまい、彼(あれ)は気象(きしやう)と云ひ、才能と云ひ、共に衆(しう)にすぐれてをる、兎も角も彼(あれ)にかぎる、」と箇様(かや う)に王様は考へられた、

因(よつ)て老実一方(らうじつひとむき)の大宰相は二人(ににん)の欺騙者(かたり)が空(から)機(はた)を弄してゐる室(しつ)に入(いつ)て見ま したが、「さて奇代(きたい)じや、何程(いくら)おほきい目を開(あけ)て見ても、何程(いくら)目鏡(めがね)を押(おつ)つけて見ても、ハテ何も見 えんわい」と心の内には直(すぐ)におもひました、併し何(なん)とも言(いは)ずにをりました、すると二人(ふたり)の悪者は進み寄(よつ)て、老宰相 を迎へて、此(この)模様(かた)や色合(いろあひ)は如何でござると問(とひ)かけまして、頓(やが)て機の所へ案内しました、老宰相は目を皿にして見 つめたが、何も見えなんだ、見えぬも道理(ことわり)、実は何も無いのですもの、そこで宰相殿は又かんがへました、「余(をれ)は実に愚(おろか)かしら ん、さうでも人にさう思はれてはならぬ、余(をれ)は真(しん)に無能かしらん、さもあらばあれ、此(この)老面(おいづら)さげて、今となつて人にそれ を知(しら)れるのも口をしい、寧(いつ)そ此布帛(きぬ)が見(みえ)なかつたなどとは言(いは)ぬが善(よか)らう、」
時に織物師の一人が「御意見(おんおぼしめし)は如何(いかゞ)でござる」とたずねましたれば、老宰相は目鏡をかけて、つくづく見て、「是は綺麗だ、実以 (じつもつ)て綺麗だ、模様(かた)といひ、色合(いろあひ)といひ………おう左様(さう)だ、いづれ帰つて、王様に十分満足した由(よし)を申しあげや うぞよ」と、思ひきつて言(いひ)ました、

二人の織物師は口をそろへて、「是は有りがたい幸福(しあはせ)でござります、」といつて、彼方(あちら)を指ざし、此方(こちら)を眺めて、一々(いち /\)名まで出放題(でたらめ)に、実地(じつち)ありもせぬ色合や、ありもせぬ模様(かた)を喋々(てう/\)かたつて聞(きか)せました、老宰相は又 その通り王様に申しあげやうとして、極々(ごく/゛\)念をいれて、渠等(きやつら)の虚言(そらつこと)を聴(きい)てかへりました、
この後も欺騙者等(かたりども)は相かはらず金銀や絹糸を請求して、此織物に莫大の金子(かね)がかゝりましたが、勿論夫(それ)はみな渠等(きやつら) がせしめて自分の懐へいれてしまつて機は全(まる)でからつぽ二人は只せくせく働らく真似をしてをつたばかりです、
少時(しばらく)あつて王様はまた他の正直な大臣をやつて、織物を見させられたが、この人もまた前(さき)の老宰相と同じい事(め)に出あひました、見て は又見、目をはなさず見つめてをつても、一向何も見えませんでした、すると二人の欺騙者等(かたりども)は其(その)ありもしない奇麗の模様(かた)や、 美事(みごと)の色合を何(なん)のかのと讃(ほめ)たてゝ、「何(なん)と結構の織物ではござらぬかと問(とひ)かけました、
時に大臣殿は心の裡(うち)に考がへた、「併(しか)し余(をれ)はどうも馬鹿では無いが、………して見れば全たく任に堪ないのかも知れん、実に奇怪千万 (きくわいせんばん)だて、夫(それ)にしても先(まづ)役目をしくじらない様にするのが肝要だ、」
斯(かう)おもひさだめて帰りまして、頻(しき)りにその布帛(きぬ)を賞賛(ほめそや)し、模様(かた)や色合の選択(みたて)の善いのに至極感心した 由(よし)を述て、「彼(あれ)は如何にも天下(あまがした)に比類(たぐひ)のない結構な品と見うけましてござる、」と王様に申しあげました、
最後に王様も自身にその布帛(きぬ)の機(はた)にある間(うち)に一遍見たいと思ひまして、前程(さきほど)の二人の大臣を始(はじめ)として、その他 (ほか)許多(あまた)の臣僚(やくにん)をしたがへて、此大欺騙者(おほがたり)の処へと御幸(おなり)あそばされました、
やがて二人の大臣が口をそろへて申しましたには、「殿下この布帛(きぬ)は如何にも結構ではござりませぬか、模様(かた)といひ、色合といひ、殿下の御衣 (おめし)に至極(しごく)適当(ふさはし)うぞんじます、」と斯様(かやう)に言つて、空(くう)な機を指ざして、宛(さな)がら他の人々の目に何物か 見えでもする様に挙動(たちふるまひ)ました、

そこで王様は考がへられた、「是はまあ何(なん)たる事だ、余(よ)が目には何も見えんて、困つた事だわい、………して見ると余は愚物(おろかもの)であ るかな、余は国を治める任に勝(たへ)ない者かしらん、生れてから未(ま)だ此様(このよう)な困難に出あつた事は無いわい、」とは思ひながらも、黙つて も居(を)られ無(なき)から、「是は奇麗だ、如何にも美くしい、余は十分満足におもふぞ」と言(いは)れました、而(そう)して然(さ)も気に適(い つ)た様(やう)の顔色(かほつき)して、機をながめて居(を)られたれば、御部従(おとも)の人々も同様に皆々ながめは諦視(ながめ)たが、実は何も見 (みえ)ませんでした、然(けれ)ども皆王様のやうに、「是は奇麗だ、」「是は奇麗だ」と斉(ひと)しく申しました、夫(それ)のみか、中には今度の大行 列に是非此(この)新衣(しんい)を御着(おめし)あそばせと勧(すゝ)めまうした者さへも有りました、既に斯(かう)いふ次第であつたから皆異口同音 に、「是は奇麗だ、」「是は結搆だ、」「是は美事だ、」「是は華美(りつぱ)だ、」と呼(よば)はつて、一同きはめて満足の体(てい)に見えました、
因([よつ])て二人の欺騙者(かたり)は勲賞を賜はつて貴族に列せられましたが、兎角(とかう)するうちに大行列の前日(まへび)になつたれば、欺騙者 共(かたりども)は此(こゝ)が肝心とその夜(よ)は十六本の蝋燭をともして、徹夜(よもすがら)はたらいて、其ほねをる様子を諸人(しよにん)に善く見 せました、而(そう)して後にその布帛(きぬ)を機より取(とり)はづす真似をし、大きな鋏刀(はさみ)で裁(た)つ様子(さま)をし、糸もつけない針で 縫ふ手風(てつき)をし、さて御衣(おめし)が出来あがつてござる申しあげました、

そこで王様は許多(あまた)の将官(しやうくわん)を率ゐて見にゆかれたが、悪者等(わるものども)は夫と見るより、頓(やが)て隻手(かたて)を高くあ げて、有(あり)もせぬ衣裳を差(さし)あげる風(ふう)して、「是が御袴(おはかま)で、是が御服(おめし)で、是が羽織でござりますが、凡(すべ)て 蛛(くも)の網(す)よりも軽(かる)うござれば、御聖体(おからだ)に重い様な御繋念(ごけねん)はさらさらござりませぬ、実に此布帛(きぬ)の徳は其 処にある者でござる」と辞(ことば)たくみに陳(のべ)ました、将官等(しやうくわんたち)も之を聴て真然(なるほど)と言(いつ)たが、実(まこと)は 何も見えなかつた、固(もと)より何も無いのだから、

時に欺騙者等(かたりども)が言ふやう、「殿下もし御衣(ぎよい)を脱したまはゞ、臣等大姿見鏡(しんらおほすがたみ)の前にて此衣裳を御着(おつけ)ま ゐらせませう、

王様は即(やが)て真裸(つまはだか)になられた、而(そ)して欺騙者等(かたりども)が引(ひく)やら推すやらして王様に衣裳をつける真似をして、最後 に何か後(うしろ)の裾(すそ)であつた、而(そ)して王様は鏡の前で彼方(あちら)むき、此方(こちら)むきして、善く善く見られた、斯(さう)すると 近習御傍(きんじゆおそば)の人々は皆ひとしく讃(ほめ)そやして、「何と奇麗では無いか、美しい製作(こしらへ)ではないか、何(なん)たる模様(か た)であらう、何(なん)たる色合であらう、如何にも貴(たつと)い如何にも珍らしい御装束(ごしやうぞく)ではないか」と言(いひ)あひました、

時に式部官(しきぶくわん)が参つて、殿下が御駕(おめし)あそばす鸞輿(みこし)は已(すで)に淮備(したく)が整ひまして御門(ごもん)に御待(おま ち)まうしてをります」と言(いひ)ましたれば、王様は答へて、「余も最早支度ができてをれば何時(なんどき)でも差支(さしつかへ)ない」と言(いは) れまして、今一度(いまいちど)姿見鏡(すがたみ)にむかつて装束の具合をながめられました、すると侍従の人々は後の裾を地から持(もち)あげる様子(さ ま)を為(し)た、誰(たれ)ひとり私(わたくし)には何も見えませんとは肯(あへ)て言(いは)なかつた、そこで王様は行列の真中(まんなか)に意気揚 々と鸞輿(みこし)を轢(きし)らせて、ねりゆかれましたが、市街(まち)の両側に立(たつ)てゐる者も、窓から覗いてゐる者も皆異口同音に、「嗚呼美く しい御看物(おめしもの)だ、何(なん)と曳後(ぞろびき)の裾の美事なこと、何(なん)と恰好の善く出来たこと」と呼(よば)はりました、若(もし)も 一寸(ちよつと)でも見えないと云(いへ)ば、愚昧(おろか)だとか、役にたゝないとか言はれるから、皆(みんな)見える様子(やうす)をして、一人とし て何(なに)も見えない等(など)いふ者はなかつた、実に人は此時(このとき)ほど王様の裳束(しやうぞく)を讃(ほめ)た事はありませんかつた、

箇様(かやう)に讃歎(ほめそや)す声が四方八方から涌(わき)でる真中(まんなか)で、「イヤー王様は真裸(まつぱだか)でゐるよ、真裸(まつはだか) でゐるよ、着物を看(き)ちやゐないよ」と一人の子供が言(いひ)はやした、すると親父(おやぢ)が側(そば)にゐる人々に言(いつ)た、「には皆様この 罪の無い者が言ふのを聞(きい)てください、王様は真裸(まつはだか)だと言(いひ)ますよ」、「なに、王様は真裸(まつはだか)だと」と、一人いひ、二 人いひして、忽(たち)まち此言(このことば)が惣体(そうたい)にひろがりました、そこで終(つひ)には一同が「王様は裸体(はだか)だ裸体(はだか) だ」と呼(よば)はりだした、王様(わうさま)も如何にも道理(もつとも)と思(おも)つたから、非常(ひどく)こまつてきたが、又おもひなほして、「イ ヤ、イヤ、裸でも何(なん)でも、今さら仕方がない、兎も角も終極(しまひ)まで行(やつ)てとほさにやならぬ」と決心して、今一層ほこらしげに、優然 (いうぜん)と四面(あたり)をはらつて進まれた、因(よつ)て侍従衆(じじうしう)も依然(やはり)ありもせぬ長裾を恭(うやうや)しげに持(もち)あ げて、後(あと)にしたがつて行(ゆき)ました、

 右はデンマルク人アンデルセンの奇談集(きだんし)の一話(いつわ)なるが、未(いま)だ原書を見ざるによりて、姑(しば)らく佛蘭士人(ふらんすじ ん)ソルデ氏の訳本より翻訳したり、是もとより寓意の一小話(いつせうわ)なれば、綺語麗句(きごれいく)を以(もつ)て組たてたる人情小説の類を異な り、故に出来うべきだけソルデ氏の訳本に循(したが)ひて直訳せり、アンデルセンは貧賎より起(おこ)り、百折千磨(ひやく[せ]つせんま)の辛酸を経 て、終(つひ)に小説の大家となるに至れる者なり、故に其(その)小説は善く人情の微をきはめ得て、何人(なにびと)の心にも徹(とほ)りやすし、此話 (このはなし)の如きは、毫(すこし)も意を用ひざるが如くにして、巧(たくみ)に世相を穿ち得たる者にして、之(これ)を浅く考ふれば極めて面白く、之 を深く考ふれば極めて警戒(いましめ)となる、然(しか)れども斯(かく)のごとき寓意話(ぐういばなし)は読む人の判断に任せて、別に説明(ときあか し)を付けざるを却(かへつ)て妙味(あぢはひ)ありとすれば、其(その)指す所の何事なるかは今此(こゝ)に述(のべ)ず、請(こ)ふ読者みづから之を 弁(わき)まへよ、

諷世奇談 王様の新衣裳 畢
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1919445/1

ト ルストイの印度寓話対照表
トルストイの アーズブカ対照表
トルストイの アリとハト対照表