2017年7月17日月曜日

トルストイの印度寓話17『網の中の鳥』

トルストイ少年少女読本[3] 子供の智恵 米川正夫 訳 河出書房 1946 昭和21年

トルストイの印度寓話17『網の中の鳥』
 一人の猟師が湖の傍に網を張つて、沢山の鳥を掛けました。けれど、それがみな大きな鳥だつたので、網を持ち上げて、網と一緒に飛んで逃げました。猟師は 鳥の後を追つて駆け出しました。一人の百姓が、猟師の走つてゐるのを見て、声をかけました。
 『一体どこへ走つて行くのだ? 鳥を追つかけるなんて、そんなことが出来るもんかね?』
 猟師は答へました。『もし鳥が一羽きりだつたら、とても追つつく事はできないけれども、今は大丈夫おつつけるよ。』
 案の定その通りでした。晩になつて、鳥が塒を求め始めましたが、みんなめい/\思ひ思ひの方をさして、一羽は森の方へ、一羽は沼の方へ、また一羽は野原 の方へ行かうとするので、みんな網と一緒に地面へ落ちました。で、猟師はそれを拾つて帰りました。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1169127/16

露国民衆文学全書 第三編 ろしあ童話集  昇曙夢(のぼりしょうむ) 大倉書店 1919 大正8年
ろしあ童話集トルストイ物語17『網にかゝつた鳥』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/958849/20

春陽堂少年文庫 トルストイ童話集 昇曙夢 1932 昭和7年
トルストイ童話集童話篇17『網にかゝつた鳥』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1168514/14

The Complete Works of Count Tolstoy Volume XII.
Fables for Children 1869-1872
by Count Lev N. Tolstoy
Translated from the Original Russian and edited by Leo Wiener
Assistant Professor of Slavic Langauages at Harvard University
Boston Dana Estes & Company Publishers
II. ADAPTATIONS AND IMITATIONS OF HINDOO FABLES

17.THE BIRDS IN THE NET
A Hunter set out a net near a lake and caught a number of birds. The birds were large, and they raised the net and flew away with it. The Hunter ran after them. A Peasant saw the Hunter running, and said:
"Where are you running? How can you catch up with the birds, while you are on foot?"
The Hunter said:
"If it were one bird, I should not catch it, but now I shall."
And so it happened. When evening came, the birds[Pg 27] began to pull for the night each in a different direction: one to the woods, another to the swamp, a third to the field; and all fell with the net to the ground, and the Hunter caught them.
https://archive.org/stream/completeworksofc12tols?ui=embed#page/26/mode/2up

二十世紀少年新節用 教育講究会 編 山本文友堂 1910 明治42年
二十世紀少年新節用童話04『猟師と網』
猟師と網 挿絵01
 猟師が湖の傍に、係蹄(わな)をかけて置たが、沢山な鳥が掛つた。しかし余り鳥が沢山であつたから、網ぐるみ飛で往(いつ)て了(しま)いました。
猟師と網 挿絵02
 猟師わ夫(それ)を何処までも追(おつ)かけようとしましたが、一人の男、猟師を留(と)めて『君、そんなに追かけたつて、人間の足で鳥に追付(おつ つ)かれるものか』、猟師わ『イヤ、一羽や二羽なら棄てゝ置くが、君、アレだけ沢山な鳥だから、今に僕の手に落ちるよ』と、走り/\云いました。
猟師と網 挿絵03
 案の定、夕方になると、今まで網の中に一所に居て飛んでいた鳥わ、森の方え往こうとするもの、沼の方え往こうとするもの、野原え往こうとするもの、各自 (めい/\)勝手に好きな方え飛で行こうとしましたので、そのまゝ網ごとドツサリ地に落ち、直ぐ猟師の手に這入(はいつ)て了いました。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1169920/23

Type233B TMI.K581.4.1

仏教経典

昭和新纂 国訳大蔵経 経典部 第二巻 東方書院 昭和新纂 国訳大蔵経 経典部 第二巻 東方書院  雑譬喩経 比丘道略集
雑譬喩経26『捕鳥師喩』
捕鳥師(ほてうし)の喩
 昔、捕鳥師(ほてうし)有りて羅網(らまう)を沢上(たくじやう)に張り、鳥の食(じき)する所の物を以て其中に著(お)く。衆鳥命侶(しゆてうみやう りよ)、競ひ来りて之を食(じき)す。鳥師(てうし)其網を引くに、衆鳥尽(しゆてうこと/゛\)く網中(まうちう)に堕ちぬ。時に一鳥有り、大にして多 力(たりき)なり。身もて此網を挙げて衆鳥と倶(とも)に飛びて去る。鳥師影を視て随(したが)つて之を逐(お)ふに、人有り鳥師に謂(い)ひて曰はく、 『鳥は虚空に飛べるに汝は歩きて逐(お)ふ。何ぞ其れ愚(ぐ)なるや。』鳥師答へて曰はく、『是(かく)の如く告げず。彼鳥(かのとり)日暮(ひくる)れ ば要(かなら)ず栖宿(ねぐら)を求めん。進趣(しんしゆ)同じからざれども是(かく)の如くんば当(まさ)に堕つべし。』と。其人、故に逐(お)うて止 (や)まず。日転(ひてん)じて暮るるを以て、仰いで衆鳥の飜飛争競(まんびさうきやう)するを観るに、或(あるひ)は東に趣かんと欲し或は西に趣かんと 欲し、或は長林(ちやうりん)に望み、或は淵に赴かんと欲す。是(かく)の如くして已(や)まざるに須臾(しゆゆ)にして便(すなは)ち堕ちぬ。鳥師遂に 得て、次(つ)いで之を殺せり。
 捕鳥師は波旬(はじゆん)の如きなり。羅網を張る者は結使(けつし)の如きなり。網を負うて飛ぶは、人の未だ結使を離れず出要(しゆつえう)を求めんと 欲するが如きなり。日暮れて止(とどま)るは、人懈怠(けたい)の心生じて復(また)進まざるが如きなり。栖(ねぐら)を求めて同ぜざるとは、六十二見 (ろくじふにけん)を起して恒に相反するが如きなり。鳥の地に堕つるは、人の邪報(じやはう)を受けて地獄に落つるが如きなり。此は結使塵垢(けつしぢん く)は是れ魔の羅網なることを明す。

大正新脩大藏經 衆經撰雜譬喩 道略集 鳩摩羅什譯
衆經撰雜譬喩卷下(二四) T0208_.04.0537a19



ジヤータカ物語 林光雅 訳 甲子社書房 1924 大正13年
捕捕者と鶉の話
 その昔ブラフマダツダ王がベナレスの王であつた頃。菩薩は鶉に生れ来て数千羽の鶉の頭(かしら)としてある森に住んでゐたその頃、鶉を捕りにこの森へ来 る捕捕者(とりとり)があつた。かれは巧みに鶉の鳴き声を真似て、鶉を呼び集めその上へ網を投げてはその四隅を引きよせた。かうして捕へた鳥を持つて来た 籠へ入れてわが家へ持ち帰り、やがてこれお売り捌いてその日その日の生計(くらし)をたてゝゐた。
 さてある日のこと鶉の頭(かしら)は部下の鶉に対[むか]ひて、
『この頃捕鳥者が私達の仲間を荒して困るが、私はあの捕鳥者につかまらずにすむ妙案を考へ出した。これからは網を投げかけられたら、皆でめい/\直ぐに網 の目へ首を突き込み網もろ共に思ふ所へ飛んで行つて、どこかいばら藪の上へ網を落とすがよい。さうすれば下から網の目を抜け出して逃げることが出来や う。』
と話し聞かせた。
 皆の者は、
『なる程よい思ひ付きである。』
と言つた。
 その翌日網を頭の上から投げかけられた時に、鶉どもはその頭(かしら)から教へられた通りに網を持ち上げて飛び去り、いばら藪の上に降り下から抜け出て 首尾よく逃げてしまつた。捕鳥者(とりとり)は網を藪から取り外づしてゐる中に、日が暮れかけて来たので空手で家に帰る外かに仕方がなかつた。翌日もその 翌日も鶉は同じ手で無事に逃げることが出来た。捕鳥者は毎日日の暮れまで網の取り外づしに手間取つてしまひ、結局空手で帰るのがおきまりであつた。そこで怒つたのは女房で、
『お前さんは毎日毎日空手で戻つて来るが、屹度何処かに囲ひ者でも出来てその方へ入れ揚げるのであらう。』
と詰問に及んだ。
 捕鳥者は女房から意外の嫌疑を受けたので、
『いやどうして囲ひ者どころの話ではない。鶉の奴め予て謀(しめ)し合せて置いたものと見え、私が網を投げかけると網ごと飛んで行つていばら藪に網をひつ かけ、まんまと下から抜け出してしまうのである。併しそういつまでも互ひに気の合ふものでもあるまい。まあ心配することはない。奴等が喧嘩でも始めたら最 後、一羽残らず捕へて来てお前に喜んでもらふとしやう』
と弁解しながら女房に対ひ、次のやうな歌の句を歌つて聞かせた。
  気の合ふ中は鳥も網ごと飛んでゆく。
  併し喧嘩を始めたらみんなこつちのものになる。
 その後間もなくある鶉が餌を食ふ為めに地面に下り立つた時、別の鶉の頭(あたま)を間違つて踏みつけた。すると踏まれた鶉は怒つて、
『誰だ。私の頭を踏んだ者は?』
と叫んだ。
『私だよ。だがわざとした訳ではなし、まあそう怒るなよ。』
と踏んだ鶉が宥めた。併し踏まれた奴はなか/\機嫌を直さうとはしない為めにお互いに悪口雑言の末、
『こん度網を投げかけられたらお前独りで持ち上げる積りだらうな。私は知らないいよ。』
と言ひ争ふた。
 これを聞いた鶉の頭(かしら)は心の内で、
---お互いに言ひ合ひをする者にはとても無事な世渡りは出来ないものだ、かれ等も網を持ち上げることを互にかづけ合つて身の破滅を招く時が来たのだ。捕鳥者はうまくせ しまることであらう。私ももうこゝにかうしてはゐられない。---
と思ふたので、早速部下の鶉をひき連れて他の場所へ移り住んだ。
 果せるかなかの捕鳥者(とりとり)は数日を経てから再びやつて来て、鶉の鳴き声をまね沢山の鶉を呼び寄せた。そこで例の如く網を投げかけたところが一羽 の鶉は、
『お前が網を持ち上げると頭の羽毛(はね)が脱け落ちるよ。さあ持ち上げて御覧。』
と言つた。すると相手の鶉は、
『お前が網を持ち上げると両方の翼の羽毛が脱け落ちるよ。さあ持ち上げて御覧。』
と言ひ返した。
 併しお互にこんなことを言つてかづけ合つてゐる 間に捕鳥者は早くも投げた網を持ち上げて皆の鶉を捕へた。そして携へて来た籠に詰めこんで家へ持ち帰へり、大いに女房を喜ばせたのであつた。

33 SAMMODAMANA-JATAKA.


印度説話

世界童話大系 第10巻(印度篇) パンチャタントラ 松村武雄 訳 世界童話大系刊行会 1925 大正14年
世界童話体系Pan2『朋輩獲得の巻』 (烏と鹿と亀と鼠--2巻の大枠の話)
 南の国にマヒラロピヤといふ都会(まち)があつて、その都会(まち)から程遠からぬところに、枝の茂つた高い無花果(いちじく)の樹がありました。
 この樹に、ラグパターナカといふ一羽の烏が住んでゐました。あるとき餌(ゑ)を探しに都会(まち)に出かけて行くと、鳥網(とりあみ)を持つてゐる人の 男が目につきました。
 烏はこれを見ると、心の中で、
 『この悪漢(わるもの)が無花果の樹のところにやつて来たら、あの樹に住んでゐる鳥どもは、みんなやられてしまふだらう。』
と考へました。そこですぐに無花果の樹のとこに飛んで帰つて、鳥どもに対(むか)つて、
 『悪い猟師が網と米粒を持つてやつて来てゐる。すぐに網をはつて、米粒をまくだらう。が、その米粒は恐ろしい毒薬と考へなくてはならぬよ。』
と云ひました。云つてゐるうちに、もう猟師がやつて来て、網をはつて、米粒を撒いて、自分は程近いところに隠れました。しかし鳥どもは烏の話を聞いてゐま すので、少しも対手(あいて)になりませんでした。
 そこへチトラグリーヴァと云ふ鳩の王が大勢の鳩を連れて、餌(ゑ)を探しにやつて来ました。そして遠くから米粒を見ると、烏が止めるのも聞かないで、そ れを食べ始めました。と思ふとみんな網にかかつてしまひました。
 猟師は大層喜んで、棒を振り上げながら駈けて来ました。鳩の王はこれを見て、鳩たちに、
 『恐がるには及ばぬ。
  「不幸に際して細心の思慮を失はぬものは、
   常にその力によつて不幸を征服することが出来る。」
といふことがある。みんな力を合わせて、網をかついだ儘、一せいに飛び上るがいい。もし恐がつて、一せいに飛べないとみんな命を失つてしまふぞ。』
と云ひました。そこで鳩は力を合せて、網をかついだ儘、一せいに空に飛び上りました。
 猟師はびつくりして、そのあとを追つかけましたが、やがて鳩の姿は遠くへ見えなくなつてしまひました。
 鳩の王は猟師が見えなくなると、鳩たちをマヒラロピヤの都会(まち)の北の方に住んでゐる一匹の鼠のところにつれて行きました。この鼠はヒラニヤカとい つて、鳩の王と大層親しい友達でした。
 鳩の王は、鼠の住んでゐる穴に来て、高い声で、
 『ヒラニヤカさん、早く来て下さい。わたしは大へんな目にあつてゐるんだから。』
と云ひました。鼠の穴の中から、
 『お前さんは誰です。何しに来たのです。大へんな目つて、どんなことです。』
と尋ねました。
 『私はお友達の鳩の王ですよ。だから早く出て来て下さい。あなたの力をどうしても借りなくてはならないんですから。』
と、鳩の王が云ひました。鼠はその声音(こわね)を知つてゐますので、すぐに穴の中から出て来ましたが、鳩どもがみんな網にかかつてゐるのを見て、大へん 驚きました。鳩の王はそのわけを話して、
 『どうか網を咬みきつて下さい。』
と頼みました。鼠は承知して、先づ第一に鳩の王を助けようとしますと鳩の王はそれをおし止(とど)めて、
 『どうか家来どもを先に助けて下さい。』
と云ひました。鼠は腹を立てて、
 『お前さんの云ふことは間違つてゐますよ。家来はいつも主人の後になるものではありませんか。』
と云ひました。
 『いや、さう云つて下さると困りますよ。家来たちは、みな私にたよりきつてゐるんですから、こちらでもそのつもりで、情をかけてやらねばなりませんよ。 私の体にかかつてゐる網を咬みきつてゐるうちに、もしやあなたの歯が折れたり、猟師がやつて来たりすると、家来どもがすつかりやられます。だから先づ家来 どもを助けやつて下さい。』
と鳩の王が云ひました。鼠はこれを聞くと、大へん喜んで、
 『いや私も、王としての業務'(つとめ)は知つてゐますよ。だがちよつとお前さんを試して見たのですさ。では家来たちを先に助けて上げますよ。』
と云ひました。そしてすつかり網も咬み切つて、鳩たちを助け出して、それから最後に鳩の王を助け出しました。
そして、
 『さあ早く家(うち)にお帰り。もしも困つたことがあつたら、いつでもまたやつておいで。』
と云ひました。鳩の王は大層嬉しがつて、家来と一しよに飛び去りました。
------以下省略

パンチャタントラ アジアの民話12 田中於莵弥・上村勝彦訳 大日本絵画
Pan2『鴉と鼠と亀と鹿』

シャルマン物語 : 印度の教養  森畯二 訳 拓文堂  1942 昭和17年 (ヒトパデーサ)
シャルマン物語1『鴉と鳩と亀と鹿との話』

ヒトーパデーシャ―処世の教え   ナーラーヤナ 著 金倉 圓照  北川 秀則 訳 岩波文庫
Hito1『友を得る道』

カリーラとディムナ  菊池淑子 訳 平凡社
Kali03『数珠かけ鳩とかもしかと烏とねずみと亀』

ラ・フォンテーヌ寓話 今野一雄 訳 岩波文庫
Laf12.15『鴉と羚羊と亀と鼠』
(前半がかなり翻案されており、網に捕まるのが、羚羊になっている)


ト ルストイの印度寓話対照表
トルストイの アーズブカ対照表
トルストイの アリとハト対照表